ドラマ人間模様「夢千代日記」1981年放送 NHK





1981年放送
脚本:早坂暁
出演:吉永小百合、樹木希林、秋吉久美子、中条静夫、林隆三 他

あらすじ


湯里で置屋の女将をしている夢千代は、神戸の病院の帰りの列車の中で川崎署(神奈川)の刑事・山根と知り合う。しかし山根は、夢千代の置屋で芸者をしていた市駒を殺人容疑で逮捕するために湯里を訪れていた。
耐える吉永小百合=夢千代さんを取り巻く山陰の人々の生き様を描いたドラマ。

※北大路欣也が出た映画版ではなく、それより前に放送されたドラマの第1シリーズです。

ネタバレビュー

このドラマで初めて『表日本・裏日本』という言葉を知りました。
高校の頃再放送で観たきりでレンタルにも置いてなく困ってたんですが、NHKのオンデマンドに置いてあって再び観る事ができました。
ちなみにドラマ版は続編が2本あって、石坂浩二が小百合の相手役だったり松田優作が相手役だったりとなかなか豪華。
映画版もあるんだけどそっちはイマイチだったなあ。

で、このドラマはそれの第1シリーズで、訳有りの芸者ばかりを抱える置屋の女将・夢千代が吉永小百合。
その置屋の芸者が樹木希林や秋吉久美子。夢千代の元恋人役に東映のドン岡田裕介、その母親で煙草屋旅館の女将が加藤治子、その旅館の女中頭が佐々木すみ江ばあさん。町の顔的存在のヘタレオヤジに長門勇、ストリッパーが緑魔子(!)、劇場の照明係があがた森魚、町のニセ医者はケーシー高峰。湯里警察署の捜査課長は『あぶない刑事』の課長でおなじみ中条静夫。

そして、夢千代の置屋で働いていた市駒を殺人容疑で逮捕しにわざわざ神奈川から追っかけて来た川崎署の山根刑事は私の期待を裏切らない林隆三。
続編の石坂浩二や松田優作と似たような位置付けですね。夢千代さんと恋仲にはならないけど。

こんな感じで、地味なのか豪華なのかよくわからないキャスト陣。樹木希林が細かい笑いを入れてくれてるのが良い。この人いなかったら結構な鬱ドラマになってた気がする。まあ話の根っこが暗いから・・・ほとんどの登場人物が暗い。
でも各人とても丁寧に描かれていてみんなが思い合っていて、まさに人間模様って感じです。

夢千代さんは広島で胎内被爆し、あと3年(2年だっけ?)の命である。早速暗い。半年に一度、こっそり神戸の大きい病院へ通っている。

自分の運命に耐え山陰の寒さに耐え、訳有りの芸者ばかりを抱えて置屋の借金にも耐えている。さらに以前雇っていた芸者の市駒を追って刑事がやってきたので更に心配事が増える。全5回、ひたすら不安そうな表情をしている。
どの作品を観ても何かに耐えていてこうゆう役しかできないんだよな。サユリストごめんね。

でも選ぶとしたらこの夢千代役が一番良いかなあ。なんだかんだで役にはまってるよ。

市駒を追って湯里にやってきた山根さんは早々に胃潰瘍で倒れ、ニセ医者ケーシー高峰の診療所の世話になる。
ケーシー高峰は町の人に医師免許が無い事を内緒にして長年診療所を続けているので、刑事に入院されては非常に都合が悪い。

山根の体調を心配した中条静夫は川崎署へ返そうとするが、山根は『俺のヤマだから』と頑なに拒否。
執念深く捜査を続けようとするがなんせニセ医者の診療所なので体調はさっぱり良くならないし、挙句吐血するわで病床に寝っぱなし。
やる気のない看護婦と山根の検便のくだりは腹抱えて笑ったw このドラマは人の弱さから出るちょっとした笑いが所々にあるのが良いね。

そんなこんなの間に夢千代のところへ戻ってきた市駒。
市駒は『表日本』に憧れ駆落ち同然で湯里を出たが、相手の男は競輪だか何かにハマり市駒をトルコへ売ろうとした。拒否した市駒は男から暴力を受けるようになり、耐え切れず男の首を絞めて殺してしまった。

この話を山根が聞いていた事に気付いた夢千代は市駒をこっそり逃がそうとするが、市駒は『もう疲れたから、中条静夫のところに連れて行って欲しい』と頼む。『あの人、殺人犯を逮捕した事がないんです』と。
山根はその場に居たにも関わらず、黙って市駒を見逃してしまう。

診療所にいる間に、山根は自分の妻が家を出て行ってしまった事を知る。ここ10年捜査一筋で家にもほとんど帰らない生活に妻は耐えられなくなったらしい。肩を落とした山根はあと1歩のところまできて市駒を自分の手で逮捕できなかった。
胃潰瘍になるまで必死で仕事してきた末に嫁さんに逃げられちゃねえ。やる気もなくなるよなあ・・・嫁さんが出て行く気持ちもよくわかるが。
それだけならまだしも、限界まで追い込まれているはずの市駒が中条静夫を気遣った優しさもかなり堪えたんだと思う。

ある日、ケーシー高峰診療所に赤ん坊が預けられる。ケーシー高峰と看護婦のやり取りをこっそり聞いていた山根は、ケーシー高峰が医師免許を持っていない事に気付き中条静夫に調べるよう勧める。
そしてケーシー高峰も自分が疑われている事に気付き、翌朝子宮ガンを患っていた置屋の芸者を連れて湯里をこっそり出て行く。

捨てられた赤ん坊は、子の出来ない夫婦に引き取られていった。ケーシー高峰は赤ん坊の斡旋もしていた事も発覚。
秋吉久美子の子供も、実は本人の子供ではなくこの診療所でもらった子供だった。秋吉久美子は心中に失敗した過去があって(相手は北村総一郎!)、子供でも居なければもう生きていけないと思ったのだ。

山根は看護婦に今までの誓約書を全部持ってこさせ『犯罪ってのは証拠が残らなければ犯罪にはならない』と言いながら全て焼いてしまう。『俺は刑事を辞める』と。
ずっと『表日本』で生きてきた山根にとって、湯里のような『裏日本』の人々の弱さとか優しさとか、人と人が寄り添って必死で生きている姿は、刑事として突っ走ってきた山根が忘れてしまっていたものだったんじゃないかね。

私は再放送当時このふてぶてしい林隆三にときめきまくったもんですが、あまりに渋いんでもう50近いおっさんだと思ってたんだけどこの時まだ38歳だったという衝撃。
終始ムスっとしててふてぶてしくて低い声でブツブツ喋るし早々に倒れてほとんど着物姿で色気倍増し。
野性的な顔立ちなんだけど垢抜けてて『表日本』っぽい品もある。嫁さんの手紙を読み上げられてる時の呆然とした表情とか誓約書燃やしてる時のこのくたびれ感とか、もう最高ですよ。

若いうちからこうゆう雰囲気のある俳優さんって今はなかなか見当たらない。男子も小綺麗な顔立ちの人が増えたよね。
林さんみたいなタイプはほんとに絶滅危惧種だと思う。