メイクの濃さをなんとかして『わが生涯のかゞやける日』

1948年
監督:吉村公三郎
出演:山口淑子、森雅之、宇野重吉、滝沢修、清水将夫、加藤嘉、三井弘次 他

戦時中は熱い青年将校、戦後はヤクザの用心棒となったモルヒネ中毒森雅之が親分の女になった山口淑子と恋に落ち改心していくおはなし。

脚本が相当カットされているとのこと。
完成後さらに検閲でカットされているそうで、本来ならもっと政治色の強い社会派ドラマになるはずだったらしい。結局ギャング系の要素ばっかり残っちゃって。
モリマがストライキ破りするシーンは観たかった。

終盤のやたらと濃厚な接吻シーンも一躍話題になり、この頃のモリマは接吻のことばかり聞かれてますが(笑)
その接吻シーンについては後述するとして…

 

これはとにかくオープニングが最高!
音割れして大迫力のテーマ曲に水平線からぶわーっと出てくるクレジット。わくわくします。

終戦前夜、青年将校のモリマは平和主義の政治家を暗殺。
その娘に短剣で斬りつけられ、腕に傷を負ってしまう。
戦後は闇商売してる滝沢修の子分に成り下がり、モルヒネ欲しさに用心棒みたいなことをしながら無気力な毎日を過ごしてます。

このモヒ中演技が凄い。
吉村公三郎曰く「どこで覚えてきたのかわからない」そうですが、髪の毛ぐちゃぐちゃにしてヨダレ垂らしてのたうちまわってね。
妙にリアルだし、モリマのヨダレはちょっと刺激が強いです。

メイクがまたこれでもかってくらい濃くて濃くて、いくら薬物中毒だからとはいえそこまでせんでもいいんじゃないですかっていう…画面のコントラストが結構強めだからさ、余計に黒い(笑) 
『酔どれ天使』の三船敏郎のメイクもすごかったけど、ヤ○中といったらここまで濃くしないと感じが出ないぜってことだったのかね。

親分の滝沢修のメイクもサイレントっぽくて見慣れるのに時間がかかりますが、それ以上にびっくりするのは滝沢修の身体ですよ。筋肉!筋肉!
刺青メイクも派手ですごいけど、胸筋がやばい。服着てるとひょろっとして見えるのに…

ダルクローズ体操っていうんだっけ、滝沢修がやってたの。
それのせいか知らないけど、とにかく細マッチョフェチさんは必見の身体です。

モリマが惚れちゃう山口淑子は元々はいいとこのお嬢さんでしたが、戦後は父も家も失ってあばずれ系に成り下がってしまいました。
チビT着てへそ出しスタイルの山口淑子。流行は繰り返すのだとしみじみ。
  
そんな山口淑子の義兄・清水将夫も、戦中は鬼畜検事でやりたい放題してましたが今はやっぱり落ちぶれて、かつていじめまくった自由主義者の仕返しに怯えつつ滝沢修にヘコヘコしながら生きてます。

山口淑子を気に入った滝沢修は「あの女を連れてこい」と子分のモリマに指示。
で、山口淑子を呼びに行ったら新入りのくせに生意気だとか言われて先輩の逢初夢子と取っ組み合いの大げんかしてました。
フォーク掴んで間一髪のところで仲裁に入り、そして山口淑子に滝沢修を取られてしまった村田知栄子をチークダンスで優しく慰めてあげる素敵なモリマなのでした。

そう、おクスリの禁断症状が出ていない時のモリマは普通にまともだし、メイクも若干薄めに見えて(それでも濃いけど)なかなか素敵なニヒル系美男子なのです。

そこへ松葉杖をついた正義の宇野重が登場。
彼の正体は民主新報の記者。戦中は清水将夫に拷問されて片脚が不自由になった自由主義者であり、モリマの古いお友達でもある。
宇野重は滝沢修の悪事を暴くために乗り込んできたわけですが、そこに自分の脚をダメにした清水将夫がいたもんだから大変です。

そしてモリマも大変です。
滝沢修の別荘で山口淑子の身の上話を聞いたところ、終戦前夜に暗殺した政治家の娘、つまり自分の腕を斬りつけてきたあの娘はどうやら目の前にいる山口淑子なのです。

ここから一気にまともなイケメンモードに突入するモリマ!かっこいい!
「あんな奴の女になっちゃいけない!」と、必死で山口淑子を説得。

滝沢修には「あの女をください」とかっこよく宣言するものの、仲間に命を狙われた挙句肝心なところでおクスリが切れてしまい、その結果お友達の宇野重を裏切り悲劇の決闘へと突入していく…

 

自分の父親を殺害した男をそんな簡単に許しちゃっていいのかい?ずっと憎んで探してたのに、それが自分の愛した男ときたらもっと葛藤するもんではないの?
という疑問は残るものの、まあ相手がモリマなら…ってことで納得するしかない。
まともな時はかっこいいし。

この作品に関してはちょっとおもしろい話があって、この頃のモリマって三船敏郎にめちゃくちゃハマってたんですよ。『酔いどれ天使』の三船が大好きなんだって。
で、この映画で同じようなギャングの役だから、演る時に歩き方とか三船のモノマネが出ちゃうとか言ってて。
好きすぎて出ちゃうんだって。かわいいね。

しかし「これ三船を意識しながらやってたのか…」
って考えるとなんだかちょっと(笑)
気の向いた方は『酔いどれ〜』の三船とこのモリマと、見比べてみてください。

で、問題の接吻シーンですけどこれ全然美しくないんですよ。ほんとに。
撮り方がまずもう全然美しくないんだけど、それに加えてあの余計なセリフ!なんであんなに喋らせちゃったの!?

映画の締めくくり、ここから人生再スタートっていう一番大事なところだったのに全部ぶち壊しちゃったって感じがして、本当に残念な仕上がりで…あれじゃ雰囲気もクソもあったもんじゃないよ。
とても映画のウリにできるようなもんではないと思いました。

しかしその他のシーンはなかなか凝った撮り方していて、サングラスに映り込む山口淑子とか、雨の決闘シーンの引きの構図なんて非常にかっこよくて印象に残ります。
ロングコート姿で雨の中佇むモリマもかっこよかった!メイクは死ぬほど濃かったけど…