『妻として女として』1961年

1961年
監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子、淡島千景、森雅之、仲代達矢、飯田蝶子、星由里子 他

いくら話し合ったところでどうにもならないし悪いのはいつだって森雅之という(笑)
容赦のないドロドロ三角関係。その被害に遭う子供たち。

新文芸坐の成瀬巳喜男特集にてやっと観ることができました。
フィルムの退色が酷いと聞いてたんですがほんと赤いっていうか…紫玉ねぎみたいな。そういや昔のカラー写真ってあんな感じの色合いになってるなあ。傷もだいぶ酷いし、コマ落ちっていうの?あの、いきなりブツッと飛んじゃうやつ、これも頻繁にあって酷かった。
素材として限界ではないかと思うんだけど、あれしかないのかなあ。まあ観れないよりかは全然いいんですけど、VHSにはなってるんだからデジタル素材ありそうなもんですが。

高峰秀子はバーのマダム。そのバーのオーナーが淡島千景。淡島千景の夫が大学教授してる森雅之であり、森雅之は高峰秀子と愛人関係でもある。このふたりの関係は戦前からで、もう随分長い。森・淡島夫妻には娘(星由里子)と息子がいるが、実はふたりとも高峰秀子が産んだ子供。息子がよく歌うんだよね。デコちゃんもよく歌うんだ。似たもの親子なんだよなあ。

モリマとデコちゃんのお泊り旅行で、運悪くモリマの教え子たちと遭遇してしまう。その途端にモリマはソワソワ、帰りの電車も離れて座るという気の小ささ情けなさには本当に腹が立って(笑)教え子たちには堅そうに見えて柔らかいシナチクとか呼ばれてるけど話が進むにつれて本当にシナチクに見えてくるから面白い…いや面白くないぞ。ほんと腹が立つんだ。涙ぐみながら「急にあの人がちっちゃく見えた」ってつぶやくデコちゃんのあの気持ちわかりすぎて辛い。

モリマと別れるからあの店を自分にくれというデコちゃんの申し出を本妻の上から目線で突っぱねる淡島千景。デコちゃんの店は淡島千景が新しく出す店の抵当に入れられていたわけです。
「食器も家具も私のお金で買ったのよ!!」と激怒したデコちゃんはお友達の集まりで慰謝料はどのくらい取れるのかと相談しますが、このお友達軍団が淡路恵子に丹阿弥谷津子、藤間紫、そして関千恵子という錚々たるメンバーで圧が凄い。
それで慰謝料300万取れ!って話になるけども300万も取れない。当然これも淡島千景に却下される。実際慰謝料ってそんなに取れなくて、バーの馴染客の仲代達矢に調べてもらったら20万しか取れないんだと。仲代達矢はデコちゃんを救ってくれるのかと思いきや肝心なところで途中退場。驚いたともいえるしやっぱりともいえる展開(笑)

店もお金も駄目なら長男を返してもらおうと、デコちゃんは長男を待ち伏せして連れ出すが…

 

シナチクに人生をむちゃくちゃにされた女と、シナチクが愛人に産ませた子供を引き取り、意地で、それでも大切に育ててきた女。その間をオロオロと右往左往し当たり障りのないことしか言えないシナチク。大人たちの残念な姿を目の当たりにし、自立を決意する子供たち。
ラストの対峙は超スペクタクルでしびれましたが、シナチクが何か言うたびに劇場内に冷ややかな笑いが起きていて面白かったです。

子供を取られたデコちゃんの辛さと愛人が産んだ子を育てる淡島千景の苦しみはどちらもわかるのだけど、やっぱり本妻は本妻であるというだけで強い。私には立場の弱いデコちゃんの辛さに心をえぐられてしまって、デコちゃんがわーっとぶちまけるたびに涙が溢れてきて困った。
どんなに長く付き合ったって子供産んでたって、本妻には勝てない、その惨めさといったらもうね…。それでシナチクのあまりの情けなさに観てるこっちも腹が立つから、デコちゃんの感情がダイレクトに伝わってきちゃってしんどいのです。
じゃあもっと早く別れりゃ良かったじゃんって話だけど、それができなかった気持ちもわかるんだな。好きっていう気持ちと長い年月重ねてきたものっていうのは、そう簡単に自分から切ることができませんからねぇ。切っちゃえば楽になるってわかっていてもね。
まあこれは私がモリマっ子だから余計そう思っちゃうのかもしれません。

しかし何が一番腹立つって、実はシナチクの言ってることも間違いではないということです。
実際どれだけ話合って気持ちをぶつけ合ったところで、どうにもならない。「このままでいいじゃないか」にしておけば、今以上に不幸になることもないし、子供たちも傷つかなかったはず。子供のことを考えれば本当に「このままでいいじゃないか」なんだよな…
しかし「俺が何したっていうんだ」という台詞はほんと笑う。そもそもはおまえが悪いんじゃねえかと、観ている誰もがそう突っ込んだに違いない。

それでも子供たちには希望があって、ふたりの強い姿で幕を閉じるのがこの映画の唯一の救いでした。度々出てくる飯田蝶子おばあちゃんの癒しオーラにも救われた(言ってることは適当でも)
星由里子のお団子から三つ編み垂らす斬新なヘアスタイルは髪の毛長かったら一度試してみたいね。

実はこの映画のモリマがいろんな意味で一番酷いんじゃないですか?『浮雲』の富岡さんなんて全然可愛いもんだと思っちゃったよ。なんていうか、自分の持ち味を最大限に発揮してて(笑)観客の期待通りもしくはそこをはるかに超えて演ってのけるあたり、やはりモリマです。
国民服+丸メガネ姿は個人的に眼福でした。