「淑女と髯」1931年 日本

1931年
監督:小津安二郎
出演:岡田時彦、川崎弘子、伊達里子、月田一郎 他

ヒゲ面のうっとおしい青年がヒゲ剃ったら人生変わった話。

 

小津安二郎のサイレント作品。
戦後の小津モノは苦手なのに、戦前の小津はなぜかツボです。

時代遅れのボーボーヒゲで、仕草から何からいちいちウザい岡田時彦。
本人なりにヒゲに対するこだわりがあるのです。ところがそのヒゲが仇となり、就活がうまくいかず落ち込んでしまう。

その就活先で、以前に不良モダンガール(そういう役名)に絡まれていたところを助けてあげた可愛い女子・川崎弘子と再会。
川崎弘子から「おヒゲをお剃りになった方が…」とアドバイスされた岡田時彦は言われたとおりにヒゲをさっぱり剃り落とし、めでたくホテルマンの職をゲットする。

ヒゲを落とせば中身は岡田時彦なんだから、イケメンなわけです。
それまでは鬱陶しがってた友人の妹や不良モダンガールにまで好かれてしまい、すっかりモテ男。だけどヒゲ時代から自分を慕ってくれた川崎弘子がいるぞ。どうするの?という話です。

何に驚いたかって、岡田時彦の素晴らしすぎるコメディセンスです。とにかく楽しい!
「一緒に踊りませんか?」から剣舞の流れは秀逸で、お菓子がなくなっていることに気付く瞬間は腹抱えて笑った。表情、仕草、間の取り方、どこを取ってもコメディアンとしてパーフェクト(コメディアンじゃないんだが)

サイレント映画のテレビ放送ですから、弁士の声もなけりゃ効果音もない。完全に無音、パントマイムですよ。それでいてこれだけ夢中になれて、終始ケラケラと笑わせてくれる。その才能たるや、驚愕の一言に尽きる…二枚目というイメージしかなかった分、余計にです。

そしてもうひとつは、なんといってもヒロイン川崎弘子のとんでもない可愛らしさ
まあるい雰囲気で、なんですか、まるでミルクパンのような…そんな、白くてふわっとした…とにかく可愛いんだ。
私はすっかりハートを撃ち抜かれてしまって、鑑賞後早速他の出演作を検索した次第。

終盤の岡田時彦と川崎弘子の掛け合いはお互いの気持ちの強さ、信頼感が溢れていてとっても素敵。すっかり蚊帳の外なモダンガールはどうするんだよ…と思ったら彼女も実は素敵な子で、爽やかで温かい気持ちになれる、最高のラストでした。

「信じてる」んじゃない。「確信」してるんだ。