「あの手この手」1952年 日本

コメディ


1952年 日本
監督:市川崑
出演:森雅之、水戸光子、久我美子、堀雄二 他

共働きでちょっぴり倦怠期を迎えている鳥羽さん夫妻(森雅之・水戸光子)。
そこへ姪っ子のアコちゃん(久我美子)が突然やってきた。
なんとか鳥羽家に住み着きたいアコは、奥さんの尻に敷かれっぱなしの鳥羽さんの夫権を回復させるべく「あの手この手」を使って夫婦間を掻き回し始める。

可愛くて憎めない登場人物たちと、彼らが繰り広げるテンポの良いセリフの応酬。
ほのぼのした気持ちになれる素敵コメディ。

あの手の「あ」、この手の「こ」

机の上に足を投げ出しうとうと居眠りしてるっていう、あまりにも可愛らしい森雅之の姿で始まるこの作品。
まつ毛が長くてフサフサでうっとり。

奥さんの水戸光子は新聞社の顧問相談員っていうの?お悩み相談だとか婦人会の何かとか、とにかく仕事が多くて忙しい人。
対する夫の森雅之は万年助教授で時間の縛りがなく、物書きをしながら結構のんびり暮らしている模様。

奥さんが不在になることが多いので、鳥羽家にはお手伝いの鈴江も一緒に暮らしている。このお手伝いさんも「この家に来る若い男は皆自分の未来の夫だと思うらしい」(byモリマ)という、なかなかの濃キャラ。

水戸光子にさっぱり頭が上がらない森雅之はボサボサヨレヨレの冴えないおっさんを何の違和感もなく演じてます。いつもの色気はどこにやっちゃったの?
鈴江に「明日の朝はご飯と味噌汁にしてくれ」とお願いするものの、「奥様はパンです」と返されあえなく玉砕。寝てる奥さんを起こさないようにくしゃみを全力で我慢したり、寝てる奥さんの枕元の電気をつけて嫌がられて即行消したり、気を遣いまくって大変です。恐妻家さんってやつね。

だけどそれで凄いストレスを溜めてるかっつーと、そうゆうわけでもなさそうで。
何か言いつけられればその日のうちにきちんとやってくれるし、「たまには一緒に夕飯食べよ!」って奥さんが帰ってくるのを待ってたり(「もう食べてきました」って断られるんだけどw)、奥さんの仕事を尊重してくれるしで、見た目は超絶頼りなさそうだけど優しくて良い旦那さんって感じ。
自分の奥さんを「奥さん」呼びしてるのも可愛い。

水戸光子もそんな旦那が可愛いらしく、部屋のどっかにぶつかったらしいモリマを見て「うふふ」と笑ってたりするし、そんな水戸光子もまた可愛いんだよね。
この夫婦、忙しくてちょっとすれ違い気味ではあるものの、別に倦怠期ってわけでもなさそうなんだけどなぁ。

そこへ突然やってきたスーパーとんがりっ娘の久我ちゃん。なんでも、家出してきたそうで。
奥さんに頭の上がらない森雅之が気に入らないのか、よく鳥羽家にやってくる堀雄二を利用してまで何か企んだり、モリマ行きつけのバーのマダムとくっつけようとしたり(モリマの色気レベルがゼロのためくっつかず)、しょうゆを2升がぶ飲みして倒れてみたりと(←!?)やりたい放題。

ここまでやる真意がわからないので、久我ちゃんの意味不明なわがままっぷりはちょっとイライラさせられます。
が、どうやら久我ちゃんの父親は婿養子で、義母にさっぱり頭が上がらない人らしい。そんな父親とモリマを重ねちゃって、見ていて我慢ならないってことなのかな〜と。ファザコン?
まあそれにしたってやることが強烈だけどね。その辺は久我ちゃんのモダンな可愛さでうまーくカバーされてるように思う。そうでなかったらぶん殴りたくなるわね。

近所に住む産婦人科医の伊藤雄之助は、モリマと同じく超恐妻家。用もないのにモリマのところへやってきては世間話。間の抜けたとぼけっぷりが最高です。
「アコちゃんって、あの手の『あ』、この手の『こ』?どっかにそんな映画あったな」←このセリフもしゃれてて大好き。
こっちの奥さんのマシンガンなトークも凄い。聞いてるこっちが息切れしそう。

水戸光子に「この子を家に返してきて!」と命令されるも、なんだかんだで手土産まで持たされて久我ちゃんと一緒に帰ってきちゃうモリマ。この時の上目遣いも可愛いわ可笑しいわでたまりません。
気がつけば奥さんだけでなく久我ちゃんの尻にも敷かれてて笑える。

ところが、久我ちゃんではなく伊藤雄之助の嫁の要らんお喋りがきっかけで、鳥羽夫妻はついに喧嘩。モリマの書いた小説に出てくる、いけ好かない嫁のモデルが水戸光子だとかなんとかで。
酷い書き方をされたことにキレる水戸光子。しかし「あなたの書いた本を初めて読んだ」と言われて水戸光子以上に怒るモリマ!
しかもいけ好かない嫁のモデルは水戸光子ではなく伊藤雄之助の嫁だったというオチ。

荷物をまとめて出て行くモリマ。怒ったモリマにうろたえる水戸光子。
その様子を見てテンションが上がる久我ちゃん。笑

だけどやっぱり、奥さんに怒るなんて柄じゃなかったモリマ。一泊もせずにトボトボと戻ってくる。
お互い反省してすっかり仲直り。そして物語も、再び机に足を投げ出して居眠りするモリマの姿で幕を閉じる。
これからも二人、今までどおり変わらないスタイルでやっていくし、この夫婦はそれでいいんだってことよね。

周りがどう見ていようと、夫婦のことは夫婦にしかわからないし他人が介入することでもない。
伊藤雄之助のとこだってね、あんなうるさいお喋り奥さんで傍から見れば「うわぁ…」ってなるけど、いざ二人きりになるといちゃいちゃとくっついてて可笑しかった。

雪やこんこのBGMをバックに雪をぼけーっと眺めるモリマがむちゃくちゃ可愛くて悶絶。この映画のモリマは色気レベルがゼロの代わりに癒しレベルがかなり高いよ。

久我ちゃんは堀雄二とちょっといい感じになるの…?と思いきや、壊れちゃったかのようなバカ笑いでこの子は最後まで何がなんだか。笑
ほんとはちょっとモリマのことが好きだったみたいな設定だそうですが、その辺はあんまりわかんなかったなあ。