「鬼が来た!」2000年 中国





2000年
監督:チアン・ウェン
出演:チアン・ウェン、香川照之、ユエン・ティン 他

あらすじ


第二次大戦末期、日本軍が占領していた中国の寒村に住むマーは謎の男から日本兵捕虜の花屋と通訳を預かることになった。村人たちは彼らの扱いにとまどうが、次第に心を通わせていき・・・

ネタバレビュー

中国映画です。第二次世界大戦中を舞台にした、中国映画。
さぞ日本軍をボロクソ叩いているような映画なんだろうなと、でも香川さん観たいしなと。
恐る恐る手に取りました。

もう10年ほど前に見た映画ですが、強烈に記憶に残っています。
ザラザラとしたモノクロ映像が妙なリアルさを醸し出していた。

主人公のマーは謎の男に麻袋に入れられた二人の男を無理矢理預けられる。
その麻袋に入っているのは、日本兵の花屋と、その通訳の男。この花屋を演じてるのが香川照之です。

事情聴取を命じられ、『何かあったらぶっ殺すぞ』と脅されるマー。仕方なく村人たちと一緒に二人の面倒を見る事になる。
中国人に捕らわれ、屈辱のあまり半狂乱で『俺を殺せ!』と喚き叫ぶ花屋。

村人たちになんとか伝えようと通訳に中国語を教わろうとしますが、花屋と違って殺されたくない通訳は当たり障りのない言葉を花屋に教える。
その内容が『新年あけましておめでとうございます!』とか『あなたは私のおじいさん!』である。
花屋は『俺を殺せ』と叫んでいるつもりで『新年おめでとう!』と村人たちに叫んでいるわけです。当然村人たちはポカン。
こんな感じで、さぞ日本人にはドきつい内容だろうと思っていたら所々にブラックな笑いが散りばめられていて結構楽しい。

さて、花屋をマーに預けた謎の男は期限の日を過ぎてもさっぱりやって来ない。
村人たちは花屋の扱いに困り殺そうとしてみたりするものの、なかなか実行できない。

花屋は花屋で、自分の面倒を見てくれている村人たちに対し仲間意識を持つようになっていた。
村人たちは結局、花屋を殺さず解放する事にする。
花屋は今まで面倒みてくれたお礼と解放してもらうお礼に、食料を与えると約束する。村人たちと花屋は一緒に日本軍の基地へ行きます。

勝手な約束をして基地へ戻った花屋は隊長に罵られボッコボコ。
この隊長がまたいやらしいんだ。絵に描いたような高慢な上司って感じで。

それまでわりとノンキだった雰囲気が、この隊長出現によって一変する。
隊長役の人もしっかり日本の方でしたがいやらしくていやらしくてすごく良かったよ。

しかし約束は約束という事で、村人たちには食料を与える事に。村人も交えて宴会を開きます。
まあ良い感じに盛り上がりまして、なんだか国境を越えた宴会って感じで良い雰囲気。
しかし酒が進むにつれて空気の読めん酔っ払いが出てくるわけです。
この辺、今の飲み会と変わりありませんな。余計な事言う奴がいるんだな今も昔も。

で、その空気読めないある中国人が、隊長に説教を始めてしまう。『戦争なんて〜』みたいな感じで。
そっからなんとなく嫌〜な雰囲気になっていくわけですが・・・・
その様子に我慢ならなくなった花屋が突然激高!!中国人を切り殺してしまう。

ここから先はまさに 地 獄 絵 図 。
日本兵の惨殺劇。

わりと仲の良かった子供たちまで殺す殺す。もう狂ったように殺していく。そのあまりの光景に開いた口がふさがらなかった。
ちなみに主人公マーはたまたまこの宴会には参加していなかったため、難を逃れます。しかし変わり果てた村の様子を見て、マーも唖然・・・・

ラスト、マーは日本兵に襲い掛かり収容所へ侵入し、日本兵を殺しまくる。
花屋を殺せず泣いていたマーが、人が変わったように人を殺していく・・・戦争は人を変えてしまうとは、まさにこの事。
当然マーは取り押さえられて、観衆の目の前で斬首される事に。
斬首する役目は、あの花屋。悲しすぎる。

マーの首が切り落とされた瞬間、それまでモノクロ映像だった画面が突然パッとカラー映像に切り替わる。この瞬間が恐ろしくリアルである。

切り落とされたマーの顔は薄笑いを浮かべている。
この薄笑いは一体何を表していたのかわからず、不気味でしょうがない。しかもここで映画は終わってしまう。

タイトルの『鬼』は、当然日本人の事だろうなと思ってました。最初はね。
中国の戦争映画は大概、日本人の描写はなかなかキツい。この上なく非道だからね。
でもこの映画からは少し違ったものを感じた。『鬼』は日本兵の事ではなく、国関係なく人間の奥に潜んでいる狂気の事を言ってるんじゃないかと。
花屋がした事、マーがした事は、殺し合いという戦争によって引き出されてしまった狂気だったんじゃないかと。

正直、反日感情が強い中国の中にこういった映画を撮れる人がいるんだなという事に驚いた。
とにかくインパクトが強くて観たら忘れられない。是非一度観ていただきたい。
そしてこの映画に日本人として参加した香川さんも凄い。