いやよいやよも好きのうち『お絹と番頭』

1941年
監督:野村浩将
出演:田中絹代、上原謙、藤野秀夫、斎藤達雄、三宅邦子 他

本編開始からいきなり上半身裸の上原謙が出てきて大興奮。
この時の三井弘次も可愛くて、もうこれだけで「これは観て正解!」ってなりました。

田中絹代は足袋商を営む福屋の娘、つまりお嬢さんで、上原謙は福屋の番頭さん。
ですから絹代より上原謙の方が立場が下になるわけですが、絹代もツンツン気が強いんだけど上原謙も相手はお嬢さんだからとかいう遠慮が全くない。
涼しい顔して絹代の癪に触るようなことを言ってくるんで、ご飯の食べ方から仕事の仕方からとにかくこの二人は顔を合わせるたびに喧嘩してる。

しかし実は上原謙に惚れてる絹代。
机の引き出しにこっそり写真をしまっちゃうほど好きなのに上原謙本人に会うと発作のようにツンツンが発動してしまう悲しみ。
風邪をこじらせた上原謙を心配して看病する時も非常に手荒く(笑)無理矢理梅湯を飲ませて福屋の連中にガンガン布団をかけさせる様はドリフのコントかと思った。上から乗っかる必要あるのか?(笑)

さて、地主の河村黎吉に呼び出された福屋の主人・絹代パパは自分の代わりに上原謙を行かせます。
その地主の娘が面食いというか気がすすまないだけなのか、なかなか見合い話が進まないらしく。
ところがやってきた上原謙を一目見て気に入ってしまいます。こんな美男子がやって来たらそりゃそうなるね!

河村黎吉は絹代パパに縁談を持ちかけ。
娘の「あんなやつキライ!」を真に受けてる絹代パパは話を上原謙に伝える。

「お嬢さんの意見は?」ってサラッと絹代のことを気にする上原謙ですが、パパは絹代の発言を真に受けてるので「お絹も喜ぶよ〜!」とか大嘘こいて(嘘ついてるつもりはないんだけどね…)上原謙を説得。

部屋を出て、離れの障子に映る絹代のシルエットを見つめる上原謙。
一方、縁談話を知った絹代はショックのあまり部屋に閉じこもってしまい…

 

「いやよいやよも好きのうち」っていうのも今やすっかり批判の対象ですが(実は昔からそうだったのかもしれんけど)こんな可愛い感じなら良いよねってことで…

なんてことないすれ違いラブコメですけど、クスッと笑えるセリフのやり取りの数々で最後まで楽しく観られました。
メイン二人はもちろんのこと、ここでも萌え系な三井弘次を始めとした福屋の人々、地主の河村黎吉一家、斎藤達雄一家…みんなそれぞれキャラが良いし、役者さんが良い。
斎藤達雄が河村黎吉のライターをパクるシーンは笑った。あの絶妙な間よ!ほんとに上手いよね。
あと斎藤達雄ほんとデカイ。

上原謙はこんな二枚目役はつまんなかったのかもしれなけど、二枚目って上手い人じゃなきゃ成立しないと思うんですよ。観てるこっちもヒロインと一緒になって好きになれるような感じでなきゃいけないじゃん。

上原謙の場合、喋り方は棒気味といえばまあそうですが、この人は表情の微妙な変化のつけ方とかしぐさが上手いと思うんだ。それであの見た目だから、若いうちなんて特にですけどそこにいるだけでぐっと女子を惹きつける力があるし、サブキャラが上原謙に惚れても「そりゃそうだろうよ」と思わせてしまう説得力があるんで、やっぱ二枚目の上原謙は強いっすよ。

最後の絹代パパはちょっと都合良すぎない?斎藤達雄に失礼すぎません?
でも娘のために頭を下げることができる、良いパパってことでいいですかね。
いつも小言ばかりの岡村文子も珍しく聞き分けがいいというか(小言を言わないわけではない。笑)そういえば悪い人が一人も出てこなかったなぁ。

楽しくてほっこりできて、地味だけど良い映画だった。
こういう作品がDVD化されてるってのは、嬉しいことですね。