「人間の証明」1978年ドラマ放送版

サスペンス
1978年放送 全13話
脚本:早坂暁
出演:高峰美枝子、山村聡、岸本加世子、岸部シロー、林隆三 他

ホテルのエレベーターの中でアメリカ国籍の黒人ジョニー・ヘイワードが刺殺された。
麦わら帽子と西条八十詩集を残して死んだジョニーの事件を追い、警視庁捜査一課の横渡刑事と棟居刑事が捜査に当たる。
母親に捨てられ、父親をGIに殺された過去を持つ棟居と、事件の中心となる郡家の物語。

映画ではなくテレビドラマなんですが、とても素晴らしかったので。
しかしこんな古いドラマの記事書いて読む人いるのかね…

「人間の証明」という作品について

母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね・・・・

という事で、『人間の証明』といったら一般的には松田優作=棟居の映画版でおなじみのあれです。竹野内豊が主演でドラマもやっていたような。私はそれ観てなかったけど。

松田優作版も昔観たきり、それこそ『母さん、あの帽子〜』のセリフとジョー山中の曲くらいしか記憶にありません。

で、これは1978年に放送されたドラマ版で。
えーと、たぶん知ってる人少ないと思うしキャストも地味めなんですけど、映画版よりこっちのドラマ版のがクオリティ高いとの話を小耳に挟んだので観てみました。

林隆三出てるしね。←結局コレ

で、観てみたらほんとに素晴らしいんだ。
地味だけど味がある。各話、ほぼ無駄がない。ホッとする時間を一切与えてくれないw

文句なしで人間ドラマの傑作だと思うの

各話冒頭に、必ず終戦直後の棟居の幼少時代の場面がモノクロで流れる。
モノクロなせいもあってか、やたらリアルに見える。この冒頭の場面は毎回順を追うようになっていて、棟居の生い立ちがよくわかる作りになっているのでとても効果的。

登場人物がとにかく多くて、しかもみんな繋がりがあって下手するとごちゃごちゃになりそうなんですが、各人物ほんとに丁寧に描かれていてキャラが立っているのでわかりやすい。ここが素晴らしいと思った。誰の視点から見ても楽しめる。

棟居の周辺の人物との関係と捜査がうまく絡み合っていて、話の筋がしっかりスッキリしてるのも良い。
私みたいなおバカでも混乱なし。
『ここはどうなったの?』『今のは結局どうなったの?』そうゆうモヤモヤが残らない。

極めつけはりりィの主題歌。
登場人物みんなに当てはまるような歌詞で、このドラマのために作ったんじゃないかと思うくらいです。
『さわがしい楽園』というタイトルです。興味があれば是非。
この曲をバックに、終戦後のモノクロ写真と現代(70年代)の映像が交互に流れるの映像がとても印象的でした。

郡家の長女役が、まだ17,8歳の岸本加世子。長女って、映画には出てこない気がするんですけど合ってる?
岸本加世子、デビュー間もない頃だと思いますが既にむちゃくちゃ上手い。ビックリ。
どんよりと暗いモノローグは時々何言ってんのかわからないくらい声が沈んでて暗い。性格も暗い。とにかく暗い。
主役ではないんだけど裏の主役って感じで、彼女の日記調のモノローグが物語りを引っ張って行く。

そんな岸本加世子の家は超お金持ちで、家族思いだけど愛人がいる父親の山村聡は大物政治家、鉄仮面でこのドラマの肝である母親の高峰美枝子は世界的に名の知れてる・・・華道家?とにかく日本の文化を世界の人に伝える仕事をしているらしい。

兄はどこかで見た事あるなと思ったらフォーリーブスの人だった。元祖ジャニーズですよ。元祖だっけ?ブルドックだよブルドック。知らない人はお父さんお母さんに聞いてみてください。又はおばあちゃん。
この兄貴がとんだマザコンクソったれ男で最初から最後まで最低。車で女性を轢き殺した挙句原っぱに埋めて彼女と逃げ回る。
こんなバカはさっさと捕まってしまえ!と思いながら見てたけど要領の良い男でしぶとかった。

父親をGIに殺されたという過去のせいでアメリカ人大嫌いな棟居(別名オカリナさん)がジョニーの事件を追う事になる。この棟居を演じるのが林隆三。
無骨で影のある雰囲気がドンピシャ!もうこれ観たら他の棟居とか考えられない。

母親に捨てられたせいで女性を信じる事ができず、接し方もイマイチわからない様子。
一応彼女がいるものの、一緒にいても『彼女』に対する態度じゃないんだよなあ。当然彼女はそんな棟居が不満ですよ。
この彼女が多岐川裕美でまあほんと美人過ぎてね。
棟居さん、多岐川裕美に泣かれて『いかんな俺は・・・』とか言って反省するんだけど、不器用なところはその後も一貫して変わらずw

えーっと、棟末が35歳の設定で、林隆三が34歳か。34!?
あの渋さでまだ30代前半だと・・・?
信じられない。詐欺だ。もうどうしろっていうんだ。←何が

班長のオールバック佐藤慶も渋い。あの肩幅の狭さが昔の男って感じね。
ちなみに棟居と同じ課に後のスリーアミーゴスである北村総一郎が出てるんですが、今の面影が一切ない。事前に教えてもらわないとたぶん最後まで気付かない。
目元と声が、ああーそう言われてみればそうかな・・・くらいな感じで。昔はわりと男前だったのね。

最初に棟居とコンビ組んでるおっさんは超棒読み句読点ブツ切り喋りでド肝を抜かれる。そのせいなのか何なのかわからんけど3話目から稲葉義男に交代していたw
安心と信頼の稲葉義男です。
日系アメリカ人の戸浦六宏も見るからに胡散臭くていい感じ。

フォーリーブスに轢き殺された女性の夫はなんとあの岸部シローである。
若い!!めっちゃ若い!!しかし情けない雰囲気は変わらない!!そして役も情けない!!
ナイスキャスティング。シロー体でけーなと思ったらこの人身長187センチもあるんだね。モデルやん。身長に全部持っていかれちゃったんだな・・・

シローは突然姿を消した嫁を必死で探すが、その必死さ加減がまたいかにもって感じで笑える。シローは病気で働けず嫁が水商売して生活を支えてたんですが、こんだけあちこち探し回れたら普通に仕事できただろ。

探している途中で嫁の不倫相手だった男と出会い、なんとこの不倫相手とタッグを組んで探す事に!こんな事ありえるのか?
不倫相手が自覚のない鬼畜っぷりでこれまた笑える。夫であるシローを目の前にして『私は本気で愛していました』とか言ってシローに睨まれたり、いちいち『ナオミ・・・いや、奥さん』とわざわざ言い直してはシローに嫌味を言われていた。
この二人のやりとり面白かったです。今ならこのコンビでスピンオフとか作ってたんだろうな。

棟居の母親を演じた絵沢萌子さんは、実は林さんと4歳しか違わないという衝撃。
でもちゃんと息子と母親に見えた。棟居に晒したスッピンは50代のおばちゃんにしか見えない。老けメイクが自然だったのかな。
死に際に『捨てたつもりはなかった』ってどの口が言うんじゃいと思ったけど、母親ってのはみんなそんなもんなのかね・・・
どうでも良いけどバーのおススメメニューがジュゴンカクテルってのはどうなのよ。そのネーミングどうなの。

第6話ラストで主要人物が偶然集まるシーン、棟居と母親の対面、棟居と岸本加世子が互いの素性を知るシーンなど見所は多々あるんですが、なんといっても最終話のラスボス高峰美枝子VS林隆三が凄過ぎた。

取調室での尋問も郡家での尋問も、見ていて息が止まりそうなほどの緊張感。
なんせ方や息子を捨てた挙句、今の家族を守るためにその捨てた息子を刺してしまった母親。方や母親に捨てられ父を殺され孤児として育ち、尋問の前日にその母親を亡くした刑事である。

最後の最後で両者がずっと閉じ込めていた内面が爆発した瞬間、私の涙腺も盛大に崩壊。
特に棟居の最後の一撃はもの凄い破壊力だった。高峰さんは表情のみでこれだけ内面をジワジワ出してくるという反則技。いやーもう、自分でびっくりするくらい泣いた。
高峰さんも林さんも凄い。親が子を思う気持ちと、子が親を思う気持ちって凄い・・・
これは刑事ものであり推理ものであるんだけど、根っこは家族愛、親子愛の物語なんだね。

人間ドラマの傑作です。ずっと心に残ると思う。

 

しかし母を亡くし(描写なかったけどあの後死んだのか…)父も逮捕され兄も逮捕された岸本加世子はどうやって生きていくんだろう。
あそこからの人生を思うとヘビーよ。あのままオカリナさんと一緒に居られたらいいのに、って思ったけどオカリナさんには多岐川裕美がいるしなあ。

私も観直してみないとわからないですが、映画版とはかなり内容も違うようです。
そもそも元が同じ話を映画の尺で描くかドラマで13話分かけて描くかっていう時点で、大した変更点がなくてもだいぶ違ってくると思いますが。

先に映画が公開されてるのでドラマは違ったものにしようっていう意図だったようですが、このドラマ版の方が原作に忠実だそうな。
これ観た感じでは13話できっちり無駄なしで調度良いんじゃないかと思ったので、逆にこれ2時間に縮めるってなると相当端折ってわけわかんなくなりそうなんだけど…