「人間魚雷出撃す」1956年 日本






1956年
監督:古川卓巳
出演:石原裕次郎、長門裕之、葉山良二、杉幸彦、西村晃、森雅之 他

昭和20年7月。人間魚雷回天の訓練を終えた搭乗員4人は最後の休暇を過ごし、潜水艦伊号58に乗り出撃の時を待っていた。
レイテ海域に入った伊号58は敵艦を捉え、艦長は回天出撃の命令を出すが…

元艦長、元軍医長、元回天搭乗員らの手記が基にされている。

美化でもなく、反戦でもない

森雅之推しとして、これは完全にノーマークでした。

というのも、このとおりDVDのジャケットを見てもポスターを見ても各所の配役紹介を見ても、どう考えても石原裕次郎メインの映画だなって思うじゃない。そう思って、全然気に留めてなかったのです。
ところがフタを開けてみればクレジットのトップは森雅之。話も森雅之の「回想」として進んでいく。

回天の搭乗員が長門裕之、葉山良二、杉幸彦、そして石原裕次郎。
彼らが乗る伊号58の艦長が、森雅之です。

伊号58という潜水艦は、原爆を運んでいたインディアナポリス号を撃沈させたことで知られています。その時にはもう原爆を目的地に運び終わって帰る途中だったので、後に広島と長崎に原爆が落とされてるわけですが…
このインディアナポリス号の撃沈前後の、伊号58搭乗員たちの様子や出来事を描いた作品です。

これがまた非常に淡々と描かれておりまして…日本の戦争映画では、ちょっと珍しいような。
回天の搭乗員たちが帰省した時の描写もかなりあっさり。芦川いづみと左幸子の顔見せ(でなきゃこの映画男だらけになる)と、長門裕之・津川雅彦のリアル兄弟共演のために用意された程度のように思える。
しかし津川雅彦はキレイな顔してたよね。うちのばーちゃんは生前に「いやらしい顔で嫌いだ」ってよく言ってたけど。笑

とにかく艦内での一喜一憂を淡々と映し出すことに重きを置いている、そんな印象。悪く言えば、心理描写が浅い。人間ドラマとしては弱いので、さほど評価されてる様子がないのはそのせいですかね。この映画、出てる人とかまあまあ豪華なわりに情報が少ないんですよね。

ただ、淡々としている分、逆にリアルに感じるというか…

敵艦を見つけて魚雷を打つのか回天を出すのか、敵艦に命中するかどうかという時の緊張感とか。乗組員たちが回天搭乗員に対して同情する気持ちを過剰に出さず自分たちの持ち場を必死にこなす姿。敵艦見つけたらそのままワーッといくんで、いちいち別れを惜しむ余裕もない。
艦内が浸水し酸素が欠乏していく時の、あの息苦しさ。

本当にこんな感じだったんじゃないのかなと…
私は潜水艦の知識とか全くありませんけど、艦内のセットもまるで本物のように見えた。

先に葉山良二と杉幸彦が出撃し、回天の故障で出撃できず残された裕次郎。そして長門裕之。どんどん追い詰められて死に急ぎ、モリマ艦長に出撃を何度も志願する。その度に「無駄死にはさせない」って言われて追い返されるんだけど。

「僕はスポーツやってたけど、こんなの邪道だと思う」「今はしなければならないと思うようになった」と漏らす裕次郎。
何度も出撃に失敗して…実際、そうゆう心境になってた人もいたんじゃなかろうか。国のため家族のためって言っててもね、死なんてそう何度も何度も覚悟できることじゃないと思うので…
生きるのは人間の本能だから、って軍医長の三島耕も言ってるけど。

結局ふたりは、今にも沈みそうな艦と仲間たちを救いたい一心で敵艦に突っ込んでいく。

1956年制作。終戦からまだたったの11年。
声高に反戦を叫ぶわけでもなく、かと言って特攻を美化するわけでもない。
特攻で亡くなった方たちへの鎮魂の意味合いが強いのかなと、個人的にはそう感じました。

 

そうゆうわけで、誰が主人公ってこともないし、特別誰かの見せ場があるわけでもない。
裕次郎も全然かっこつけてなくて、ごく普通の、思い悩む回天搭乗員のひとりとして、目立ちすぎず馴染んでいる。
こうゆうタイプの石原裕次郎って、裕次郎ファン的にはどうなんでしょうね。私は嫌いじゃないんですけど。←裕次郎ファンじゃないけど

森雅之もそう。これといった見せ場があるわけじゃない。見せ場があるわけじゃないんですが最初から最後まで凄まじい美中年艦長っぷりで驚愕。緊張感のある精悍な表情に無精髭と汚れた制服から男臭い色気がダダ漏れです。
搭乗員たちを思いやる姿、潜望鏡を扱っている時の姿、指示を出すときのかけ声、まあどれをとってもかっこいいとしか言い様がない。クズ男やったり女たらしやったりしてる中にこうゆう全身男前みたいな役をたまにぶっこんでくるんだから反則だよ…

てことで、森雅之推してる方には超オススメです。ありがとう日活。

航海長西村晃の飄々としたキャラクターが重苦しい雰囲気に軽さを与えてて◎!でも締めるところはちゃんと締めてかっこいい。
この人はリアル元特攻兵ですからね。どんな気持ちで演ってたんだろう。

葉山良二のリーダーらしい凛々しさ、三島耕の眼差しも印象的でした。
裁判の通訳役でデビュー間もないスーパーイケメン・岡田眞澄も出てます。