「娘・妻・母」1960年 日本

家族


1960年
監督:成瀬巳喜男
出演:三益愛子、原節子、高峰秀子、森雅之、宝田明、草笛光子、団令子 他

旧家へ嫁いでいた原節子は、里帰り中に旦那を突然の事故で亡くした上に死に目に間に合わなかったということで反感を買い、嫁ぎ先から追い出されてしまう。
旦那の保険金100万円を持ち、母や兄が暮らす実家へと戻ってくるが…

老いる前に観ておきたい、家族と「金」のはなし

このDVDのジャケットってなんで高峰秀子ひとりなんだろう。どうせひとりにするなら原節子の方がメインだと思うんだけどな。

まあまあ裕福めな家庭を描いたほのぼのホームドラマ。
…っぽく見えますが、話の内容はもっぱらお金。とにかくお金。香典の金額、保険のお金、投資、借金、財産分与…
最初から最後まで金の話でもちきりです。

話もすごいが配役もすごい。
長男が森雅之で長女が原節子、次男が宝田明、次女が草笛光子、そして三女が団令子っていう最強の美形兄弟。そしてこの兄弟達の母親が三益愛子。三益さんと森雅之は実は1歳しか年が変わらないんだけどねぇ(三益→1910年生、森→1911年生)ちゃんと親子に見えるからすごいね。

団令子以外はそれぞれ結婚していて、本家は森雅之・高峰秀子夫妻と三益愛子と団令子が暮らしている。ちなみに宝田明の奥さんは淡路恵子です。
それにしても愛人関係がお決まりのモリマ×凸コンビが普通に夫婦やってるなんて…!

で、凸ちゃんの叔父が成瀬映画ではダメ男でおなじみの加東大介なんですが、モリマは加東大介の会社に投資してます。しかしこの加東大介がいかにも…まあ加東大介という時点でもう既に信用ならないんだけど。頼りないというか「できない男」臭がすごい。
モリマよ、こんなのに投資してて大丈夫なのかい?(もちろん大丈夫じゃない)

原節子は京都だかでお茶の先生やってる上原謙とお見合いしてみたりしますが、あんまり乗り気になれません。目の前にいるのは上原謙なのに!上原謙、お茶の先生感が半端じゃない。
そんな時に兄弟経由で偶然仲代達矢と知り合って、なんかちょっといい感じになります。
しかし年の差がなあ…というところですが仲代達矢は原節子に好意を持つ。年の差がなあって言っても原節子は年取っても美人ですからね。それにしても仲代達矢はほんとスタイリッシュでかっこいいな。このふたり、キスシーンまであってびっくり。

さて、大丈夫かな?だった加東大介は当然のように大丈夫じゃなくて、会社を倒産させた挙句どっかへ逃げちゃいました。
モリマは家族に黙って家を抵当に入れて借りた金を投資していたので大変です。残されたのは多額の借金。

家を売ってもそのお金はモリマの借金返済でほとんど消えてしまいます。弟たちは当然納得いかない。
更に、これから三益愛子の面倒は誰が見るのかというシビアな話へ拡大。
兄弟は大モメで家族会議という名の修羅場。モリマは針の筵状態で得意の「みんな俺が悪いんだ」モードへ突入。情けなさ全開です。
でもモリマも悪いけど一番クズは加東大介だから元気出して。そして一番可哀想なのは三益愛子である。

1960年の映画ですが、こんな問題は現代の家庭においてもよくあることなんじゃないでしょうか。家族問題は今も昔も変わらないんですね。
この映画で描かれているのは、実はお金の問題だけじゃないんです。原節子の再婚問題に草笛光子の嫁姑問題、自分の叔父のせいで家族を崩壊させようとしている嫁の立場、女の年齢の問題…
中盤で三益愛子の還暦をみんなで集まってお祝いして楽しくやってましたけど、そんな幸せを支えている土台も、こうした家族ひとりひとりのちょっとした問題や関係が絡み合って崩れてしまうような脆さで。

私も独り身で、結婚する気も全くないんだけども…
老後のお金、老後の幸せとか、今の家族や親戚との繋がりだとかですね。そんなことを、しみじみ考えさせられました。

草笛光子の姑が杉村春子。いかにもこっちが神経使わないといけない…そんな空気を全身から醸し出しててむちゃくちゃ怖いです。だって杉村春子だもん。草笛光子が家を出たくなる気持ちはよくわかる。

そして三益愛子とちょっといい感じになる(?)近所で孫をあやすおじいちゃんが笠智衆。孫よりおじいちゃんのが可愛いぞ。
ほんのちょっとの出演ながら、終始金の話題でもちきりの中、かなりの癒し効果を発揮してます。