映画の斜陽とテレビの脅威『マンモスタワー』(テレビドラマ)

1958年11月6日放送 TBS
出演:森雅之、岩崎加根子、山本嘉子、滝田裕介、三島雅夫、金子信雄、斎藤達夫、森繁久弥(特別出演)

横浜放送ライブラリーにて鑑賞。
TBSの東芝日曜劇場枠で放送されたものの中で現存する最も古いテレビドラマになります。

電波使って映画界に喧嘩売ってやるぜみたいな話なんですが、キャスト一覧だけ見たらまるで映画。他にも下元勉や芦田伸介、殿山泰司が出てくる。
こういう話にこういう人たちが出ているというのがすごいというか、そもそもオファーしたのがすごいと思うんですけど、中年クラスの俳優さんで!ってなったらやっぱり…
しかしこの頃ってまだ「私はテレビドラマには出ません」とか「うちの〇〇はテレビには出しません」なんてことも多かったんじゃないでしょうか。

 

舞台は大宝映画という絶妙なネーミングの映画会社。ここの重役が三島雅夫とか金子信雄とか。
彼らはテレビが勢いづいてきていることを薄々感じていながら、それでも映画が負けるなんてことはありえないからと、制作や経営方針を見直す気もない。
「テレビなんて所詮電気紙芝居」的な評価で、のんきなもんです。撃ちてし止まぬの精神を忘れちゃいかんとかなんとかよくわかんないこと言い出す三島雅夫。

そんな状況にひとり危機感を感じているのが、大映映画の制作本部長の森雅之です。
ギャラに文句垂れる落ち目の女優、会社の状況を考えず金も時間も食う大物監督、なかなか出てこないニューフェイス、重役と現場の板挟みと、彼の悩みは尽きません。

モリマは白馬に乗ってパカパカと出勤してくる風変わりなニューフェイス・山本嘉子を面白がって「ああいう子を売り出さなくっちゃ!」ということで新作のヒロインに抜擢します。
ニューフェイスに優しく気を遣うモリマ。冗談を言う山本嘉子に「バカァ」と言いながら指でおでこを小突くモリマ。素敵過ぎるので3回巻き戻したぞ。

ところが彼女は現場と馬が合わず、テレビの専属になってしまう。

 

ロケ部分はVTRでスタジオ部分は生放送と聞いていたのですが、実際見てみるとほぼほぼスタジオでは?
約1時間ちょっとの間、スタッフもキャストもセットとセットの間を走り回っていたと思われる。モリマは主役で出番が多いので尚更大変だったのでは。
そのせいなのか、作品の雰囲気にスピードがあるように感じました。

見てるだけではあまりわからなかったけど、出演者数は100名以上とのこと。
さらにこれだけの名優クラスの俳優を集め、テーマも非常に挑戦的。
企画の段階からかなり力を入れていたのではないでしょうか。

そんな企画の主役にモリマを抜擢してくれたというのがファンとしては嬉しく、「これだけの人を揃えながら何故モリマを主役に?」という疑問もありつつ(笑)

モリマがこの企画を受け取ってどう感じたのかコメントを聞いたことがないのでわかりませんけど、役柄としてはたった一人で反乱を起こすような熱い男で、モリマらしからぬ…と言いたいところなのですが、本人のインタビューを読んでいると、ちょうどこの頃の映画の撮り方や制作部にはかなり不満を抱いていた様子で。

それを思うと、「おまえらよく見とけよ」という(おまえら=各映画会社のおっさん)、溜まったうっぷんを役に乗せて爆発させてるようにも見えて(笑)ここまで気合いむき出しでやってるというのは、なかなか…
とにかくこれのモリマは素晴らしい。俳優としての力量を見せつけられたという気がいたします。

映画会社の体制をなんとか変えていこうと、家庭を顧みず奔走し、大物監督に突っかかり、トーク番組では映画会社を批判し、その結果妻には逃げられ、そして会社からも弾かれる。
それでも「僕の道は一本道」と言って前を見据えるモリマの顔はかっこよかったなぁ…

しかし生放送ですから、セリフを間違えても当然そのままやらなきゃいけない。
モリマもうっかり誰が聞いてもわかる言い間違えをやらかし、ニヤニヤと滝田裕介を上目遣いで見たまま数秒固まり時が止まったかのようになっていて(滝田裕介も一瞬動きが止まってる。笑)照れ隠しみたいなニヤニヤで可愛かったです。

トーク番組出演中の手の動きとかちょっとしたセリフの言い方には、素っぽく感じられるようなところもあり。
身振り手振りで喋る人なんで…実際あんな感じだったんじゃないかなって思うんですよね。

特別出演の森繁久彌は元弁士役。
映画がトーキーになり弁士の仕事がなくなってからも映画から離れることができず、今は映画本編が始まる前に差し込まれる広告関係の仕事をしている。
で、ニューフェイス山本嘉子の父でもある。

ひょんなことからモリマと出会い、ラストまで神出鬼没のように出てきて結局最後は森繁がいいとこ持ってくんだけど(笑)モリマと森繁のツーショットを見れたのは個人的には非常に胸熱でした。
ふたりとも映画を愛する気持ちは同じ。だけど向いてる方向は少し違う…

 

当時の映画界も一時期に比べたら傾いてきているとはいえ、それでもそれなりの興行成績を上げてはいたんですよね。
テレビの勢いを感じながらも制作側がイマイチ危機感を持てないというのはわからなくもないし、映画関係者のテレビに対する評価というのは実際こういうものだったのだろうと思う。
その後テレビの黄金期が到来するだなんて、誰も考えていなかったんだろうな。

かといってテレビ制作側のいいとこばっかり描いているのかというとそうでもなく、現場は活気が溢れているものの社員は使い捨て状態といった感じで、滝田裕介も忙しく働いてはいるものの、テレビに対する情熱があるわけではない。

当時のテレビ局が作ったテレビの話なんだから、こちらもおそらく現実に近いのだろうなと思ったし…
モリマの「心の病に気をつけたまえ」というのは、もしかしたら実際、過労やストレスで倒れていくテレビ局社員が多かったのかもしれない。

これ、いつだったか台本がオークションかどこかに出てるのを見たような気がして…今検索しても出てこないので、記憶違いだろうか。
これ、ドラマ見たら台本読んでみたくなりました。
モリマの言い間違えた箇所はほんとはどんなセリフだったのかとか斎藤達雄の「ベニスで下痢しちゃったよ」は台本どおりなのかとか、確認したい(笑)