「妹」1974年 日本





1974年
監督:藤田敏八
出演:秋吉久美子、林隆三、伊丹十三 他

亡くなった両親が経営していた食堂の後も継がず引越し屋稼業で生計を立てている兄の下に、妹が突然帰ってくる。
妹は鎌倉で男と同棲していたが、どうやら何らかの理由があって帰ってきてしまったらしい。

実はこの妹、同棲相手の耕三を殺してしまい、兄を頼って帰ってきたのだ。
兄と妹、二人だけの微妙な生活が始まる。

「70年代」という時代の若者たち

かぐや姫の名曲「妹」をモチーフにして作られた近親相姦ギリギリの映画。
あの曲からこんな映画が出来上がるとはねぇ。曲のイメージだけで当時観に行った人たちはどう思ったのか聞いてみたい。

冒頭、兄である林隆三が中国の将軍みたいな口髭生やしててどうしようかと思ったが妹の秋吉久美子が帰ってきたらさっさと剃ってくれたのでホッとした。
だって似合わなかったんだよ。男前がもったいない。

秋吉久美子はまだデビュー間もない時だと思いますが、上手いとか下手とかではなくそのまんま秋吉久美子って感じだ。
あの何を考えているのがわからない雰囲気とか奔放な感じがご本人のイメージとそのまま被る。
そして文句の付けようがない可愛さ!たまごみたいなお肌でムーっとした表情がとにかく可愛い。

この映画が完全に近親相姦だ、と言えるかというとそうとは言い切れない。でもじゃあ近親相姦じゃないのかって言われるとそうとも言い切れない。
兄 と妹・ねり(変わった名前だな)のビミョーな距離感。この兄妹はいくつ年が離れてるんだ?林さんが三十路前後?秋吉久美子は二十歳くらい?

とにかくあの微妙な距離感がおもしろい。特に兄が大変危険です。妹が帰ってきた途端に何だか意識し出してソワソワ。
しかし妹に気持ちをぶつけてしまうわけにはいきません。

となると、標的になるのは別の女性。
引越し客の女子大生に「代金はお金じゃなくて体で♪」と誘われてホイホイ応えちゃったり(しかも妹を想像しながら!)後々出てくる耕三の妹にムラムラして手を出しちゃったりする。

そんなアブナイ兄の目の前を風呂上がりに素っ裸でウロウロする妹!アブナイヨー!
でもお兄ちゃんは手を出さない。妹に対する気持ちの自覚があるのかないのか、「妹が帰ってきてからどうも凶暴でいかん。遺伝かな?」とかぼやいてたりする。
遺伝のせいにしちゃいけませんよお兄ちゃん。

一方、耕三の親族は親族で彼の行方がわからず捜しているわけですが誰がどうゆう関係なのかわからんがその中に村野武範もいる。モミアゲが凄いんだけどこの頃の流行りよね。

耕三の妹に手を出しちゃったことを詫びるために、耕三の親族の部屋を尋ねる兄。
そこで待ち構えていたのが見るからに怪しそうな伊丹十三。

どうやらホモっ気があるらしい伊丹十三はいきなり兄の手を握り後ろから羽交い締めに!

「女なんてものを重要視しないほうが良い。
ある種の価値があることは認めるがあれは我々の背中のようなものだ。
しかし背中は所詮背中だ。あなた自分で自分の背中が掴めますか?」


「あんなものはほっといて我々は自分の自己感性に努力すべきでしょう!」

なんとなく伊丹十三感溢れるセリフな気がするけど意味はさっぱりわからない。
で、嫁さんにその場を目撃される。うーん、両刀だったか…

これが原因なのかわからんが伊丹夫妻はこの後子どもも道連れに心中してしまう。
この死に方も笑っていいんだか悪いんだかわらないんだけどとにかく間抜けなんだよなぁ。
そこへ刑事役の山田パンダ登場で結局笑う。やっぱり中国将軍みたいな口髭。
そうか、この時代はこうゆう髭も流行ってたんだな。

耕三も伊丹一家のお葬式に来るかもしれないよ?ってことで、兄はねりを葬式へ行かせるが当然耕三は死んじゃってるんだから来るわけがない。
そんな事は知らない兄は、ねりを耕三の家へ返せばそのうち耕三が戻ってくるだろうと、きちんと嫁に出す決意をする。

というか、兄も家から立ち退きを命じられて妹の面倒まで見れるかわからないし、このまま二人きりの生活ははっきり言って危険なのだいろんな意味で。
…と、兄がそう考えたのかどうかわからんがそうゆう気持ちも全く無かったってわけではなかったと思うよたぶん。

そんな兄の気持ちを知ってか知らずか妹も嫁に行く決心をし、近所の人に見守られながら花嫁衣装を着て写真を撮り、兄の下を去っていく。

ねりは行くあてがない。
耕三を殺してしまい切羽詰まった思いで兄を頼ってきたんだから。そこから出されてしまってはどうしようもない。
なんでお兄ちゃんにちゃんと話さなかったんだよー。あのお兄ちゃんならきっと黙って守ってくれたと思うぞ。バカだな…

海の近くの寺で剃髪したという情報を最後に、ねりは行方不明になってしまう。
最後の最後まで何も知らない兄は屋台のおでん屋さんをしながらねりを探していた。
尋ね人の看板を見たお客さんに「恋人?」と聞かれて「ま、そんなもんです」って答えてるのが何だか切ない。

 

と、まあこんなスッキリしない終わり方ですが、こうゆう話なのでしょうがない。

全体的に淡々としていて、妹が同棲相手を殺してしまった事も耕三側の親族の行動も兄がムラムラして節操ないのも伊丹十三がホモってるという事も、そして伊丹一家が心中するということも、実はストーリーとはあまり関係がないように思える。

エロいサービス的なシーンにも伊丹夫妻の心中シーンにもちょっと間の抜けたような音楽が流れていてエロさも悲壮感もあったもんじゃないし真面目にやってんだかふざけてるんだか笑っていいんだかさっぱりわからん。

 

そもそもストーリー自体、あって無いようなもので。
帰ってきた妹が兄を振り回し、そしてまた去っていく。その過程を淡々と描いているっていうだけの話なんです。

それなのに終始じっと見入ってしまう。
この時代と登場人物たちが漂わせる無気力感とか倦怠感とか、自分の思い通りにできない苛立ちとかやるせなさとかさ。
本来なら人間のマイナス要素であるはずの部分が、この映画ではすごく魅力的なんですよ。
役者さんたちが皆上手かったのでしょう。特に兄役の林隆三が放つあの気怠さは一級品と言っても過言ではない。とにかく素晴らしい!

私は70年代のドラマも好きでよく見るんですが、こうゆう無気力系若者が多く出てくる印象がある。
そうゆう時代だったということなのかな…
見終わってからもなんとも言えない切なさがしばらく残る、不思議な作品です。

あれこれ言ってみたけどそんなに難しく観るもんではないので。
可愛くてツルツルたまご肌の秋吉久美子に見惚れつつ、そしてかっこいい林隆三にときめきまくればそれでいいと思う。

若い頃の林隆三の魅力はね、あの人間と野生動物のハーフみたいな男臭い色気なんですよ。声もこんな若いうちからこんなに渋くてどうしろっていうんだ?
見ればわかる。とにかくエロい。