『生きてゐる孫六』1943年

 

1943年
監督:木下恵介
出演:上原謙、原保美、河村黎吉、吉川満子、山鳩くるみ 他

銘刀「孫六」をめぐる村の人々のお話。
戦中作品なのでところどころにプロパガンダ要素が含まれています。

冒頭の三方ヶ原の合戦シーンは「どうせやるならちゃんとしようよ」と言いたくなるほどの無気力っぷりで(笑)あれほどやる気のない「え〜い」「やぁ〜」はなかなか聞けないと思う。
上原謙の武者姿を拝めたのは嬉しかったです。ちょっと珍しくない?

その後、時は戦中。
三方原の名家・小名木家は男は短命という家系で、かつて戦場となっていた土地は「祟られるといけない」という理由でこれまで一切足を踏み入れられず、ススキが茂って荒れ放題になっていた。ここの長男が原保美で、時々咳き込んでどうも肺病を患っているらしく。
そんな体なので戦争にも行けないし、すっかりやさぐれている。その妹が山鳩くるみ。名前も顔もカワイイ。

村人たちは「国のためにその土地を開墾すべきだ」と度々すすめてきますが、小名木家は頑なに拒否。祟られるからって理由で放置していた土地を開墾しましょうって考える村人もちょっとどうかと思いますが。

そんな小名木家が所有している銘刀「孫六」を求めて、小名木家に一人の青年・細川俊夫がやってくる。
しかし小名木家に代々伝わる刀ということで、もちろん譲ってはもらえない。

初代孫六を持っていることが自慢の上原謙でしたが、なんとこの刀は偽物であることが判明。試し切りしたらボキッと折れちゃいました。
こんな刀じゃ戦場に行けないってことで、村の鍛冶屋に新しい刀を作ってもらうことにする。
こうして村の人々が孫六をきっかけにして繋がっていくわけです。

初期、戦中の木下恵介作品というと、この頃の映画の必須項目でもあるプロパガンダ要素をうまく逆手に取ってる印象があって、好きなんです。「陸軍」も「花咲く港」も。
ところがこちらは、劇中これといった盛り上がりを見せることもなくこちらの眠気を強烈に誘い、ラストはいとも簡単に全てが解決してしまって「ぇええ…」と拍子抜け。ある意味ここが一番の盛り上がり。

細川俊夫に「あなたはただの神経衰弱」と診断されいじけて引きこもった原保美が上原謙にちょろっと一喝されただけで改心してあれもいいよこれもいいよなんて言うのはねぇ…それでここまで頑なになってたオカンが感動しているというのもまたなんとも。
結局、自分のためより国のことを考えた方が万事うまくいくんだよ!ってことで、当時はこれで万歳万歳だったのかなぁ。

それにしてもバスの運転手の恋愛ネタは必要だったんですかね。
このエピソードってあんまり話に絡んできてなかったと思うんですけど、これもラストでいきなり結婚していいよみたいなことになっちゃってビックリした。

 

余談ですが三方原ってのは静岡県の浜松市にあって、今はでかい病院が建ってたりでかい霊園があったりする。この辺りは買い物で時々行くのです。
自分の知っている場所がこうして旧作映画に出てくるってのは、結構嬉しいもんですね。