不幸の玉手箱『人妻椿』

1936年
監督:野村浩将
出演:川崎弘子、佐分利信、上原謙、笠智衆 他

夫は他人の罪を被り国外逃亡、シングルマザー状態となった川崎弘子に不幸の波が押し寄せる悲劇のメロドラマ。

前編後編に分かれていて、計2時間半ほど。
川崎弘子の声をこの作品で初めて聞きましたが、わりと想像どおりというか、顔とのギャップはそんなになかった。
サイレント期よりも少し痩せて大人っぽい印象で、可愛らしいというよりもクールビューティーお姉さんて感じです。

いやでもやっぱ、可愛いっすね。
川崎弘子好きです。

 

ひとりで逃亡する夫・佐分利信を涙ながらに送り出す川崎弘子。
これが不幸の始まりで、恩人の死亡後も恩人のクソ息子・山内光に言い寄られ、夫は亡くなったと聞かされ、頼りにしてた父も海に出たまま亡くなり、ストーカーみたいな笠智衆に追い回され、出かけた先では火事に見舞われるなど、一息つく暇もありません。

そんな川崎弘子を純粋に支えようとしてくれるのが、若くてスーパービューティフルな上原謙です。

山内光は川崎弘子に「あいつ(上原謙)はこの辺じゃ有名な女たらし」などと囁きますが、上原謙はこの作品中唯一のまとも系男子。
山内光の妹・三宅邦子に狙われているものの、もう川崎弘子しか眼中にないので見向きもしません。
この三宅邦子もクソ兄貴とグルになって体当たりで結婚を迫ってくるという、兄が兄なら妹も妹です。

川崎弘子はもちろんすんなり上原謙と幸せになれるはずもなく、その間に割って入ってくるのが笠智衆。
川崎弘子のパパが笠智衆に「娘と結婚してやって」とか余計なこと言うからさ〜…娘はそんな気ないのに。
一見優しくて穏やかそうに見えた笠智衆も、これまたどこまでも追いかけてくる曲者で(笑)

デパート火災でボーボー燃えるマネキンをバックに、川崎弘子を取り合い殴り合いする笠智衆と上原謙の絵面には笑ってしまった。マネキンの燃え方がまた凄いんだよ、ほとんどホラーで。
それであの、まあなんですか、ふたりとも喧嘩してないで川崎弘子を連れてさっさと逃げた方がいいんじゃないですか…

と、観客が突っ込みたくなるところで前編が終了(笑)
こりゃみんな後編も観に行くわな。
で、その後編は3人とも包帯ぐるぐる巻きで登場します。そりゃそうだ。

意地悪そうな上原謙ママ&再び出てきた三宅邦子により上原謙とはここで引き離され、包帯ぐるぐる松葉杖になっても追いかけてくる笠智衆。
その笠智衆はいきなり出てきた吉川満子に一喝されてあっという間に改心(驚)

そして上原謙はアメリカへ。
川崎弘子の息子の前には、ヒゲ面のある男が現れる。その男は、なんと…!

 

結局ハッピーエンドを迎えるとはいえ、癒しの存在はばあやの飯田蝶子のみで、その他登場人物が揃いも揃ってクソなので観てて疲れ…良く言えば見応えがあった。
みなさん意地悪演技が上手いです。

上原謙、いきなり「あの人の気持ちがよくわかったのでもう追いかけるのはやめます」って、えっいやいやあなた一体何があったの…とビックリしてしまうあたり、後編は特に、肝心なところのフィルムが欠落してしまってるんじゃないかと思う。
吉川満子もたぶん、あれより先に出番があったんじゃないかと。

話が全然繋がらないってわけじゃないけど、そんなわけで上原謙のポジションが中途半端になっちゃってるのが残念だった。
極端に出番の少ない佐分利信より印象が薄いんだもん。しかし美貌はいつものごとく輝いていたのでその点では満足なんですが。

川崎弘子も押し寄せる不幸エピソードにただただ流されてるだけで、どういう性格の人なのかさっぱりわからないのがね…