「挽歌」1957年 日本





1957年
監督:五所平之助
出演:久我美子、高峰三枝子、森雅之、石濱朗、渡辺文雄 他

幼い頃に患った関節痛により左腕が不自由になった久我美子は犬の散歩をしていた森雅之と出会い、惹かれる。
ある日、森雅之の妻・高峰三枝子が別の男と会っているところを目撃し…

クラッシャー久我美子×お色気森雅之×ザ・マダム高峰三枝子

ファザコンだったりマザコンだったりバイセクシャルだったりダブル不倫だったりで大変なお話。
登場人物の誰にも共感できず、久我美子のキャラクターに至っては嫌悪感さえ感じる始末。障害持ちのコンプレックスとはいえ、いくらなんでも性格歪み過ぎ。フランス文学かぶれから出てくる「アミ」だの「ムッシュ」だの「コキュ」だのなんていうワードも聞いてるこっちが恥ずかしいレベル。その中にちょいちょい英語が混ざってくるのがまたダサい。

と、いきなりマイナスなことばっかり書いてしまいましたが。
当時の釧路の日本離れした雰囲気とか、霧がかった幻想的な風景とか、芥川也寸志の音楽とか…物語全体に流れてる上品な空気が、すごく好きなんです。W不倫話なのにドロドロとした下品な感じが全然しないもん。
これは出てる役者さんの力も大きいかと。久我美子高峰三枝子森雅之という、ノーブル極めたようなトリオで素晴らしいキャスティング。演技云々でなく、役者さん自身が持ってる個性って大事だなと改めて思った次第です。

で、なんつってもこれの森雅之は色気が凄いからさ!←結局これ
優しくて大人の男の包容力があって、しかしクソ生意気な小娘の挑発をキスで黙らせるという大胆さも持ち合わせていて。あれすごいね!久我ちゃんの腰をへし折りそうなキスw
普段は受け身なのに、いざ押すとなったらグイグイ押してくるのです。久我ちゃんに振り回されているようで、実はモリマのが一枚も二枚も上手よ。こんなのたまらんわ…

そんなモリマに惹かれつつ、母親がいないせいか高峰三枝子の母性にも惹かれていく久我ちゃん。それはそれでしょうがないか…って思わせてしまう高峰三枝子のマダム的美しさがまた素晴らしく。
「妻を寝取られている」というモリマの傷と、「不倫をしてる」高峰三枝子(相手は渡辺文雄)の傷をチクチクと突っつきながら、ふたりの自分に対する愛情を試しているわけです。その行動は次第にエスカレートし、最終的には高峰三枝子を自殺するまでに追い込む。

「こんなに酷いことをしても私のことを好きでいてくれるか?」っていう、自信のなさから来る感情はわからなくもないですけど、限度ってもんがあります。
限度を超えてもはやバカとしか言い様のないことを策士みたいな顔してやっちゃうもんだから、ほとんど病気です。モリマも最後は「あの子は僕の手におえなくなった」って言ってるし。
家で久我ちゃんと鉢合わせた時のモリマの視線の冷たさよ。そりゃ不倫相手が自分ちにいて自分の嫁と子供と仲良くしてたら、そりゃ「!?」ってなるわな…

誰も幸せにならないラストなのでスッキリはしないけど、例え久我ちゃんとモリマがくっついて終わったとしてもこのふたりはそう長続きはしないでしょうね。 だからあれで良かったのかもしれません。久我ちゃんには石濱朗がついてるからいいんだよ。石濱朗優しそうだし。

しかし高峰三枝子の方は、渡辺文雄がもっとしっかりしてたら自殺することなかったのでは?娘連れて渡辺文雄のところに行けば良かったんだからさ。てことで、一番悪いのは渡辺文雄かも。

なんつーか…高峰三枝子の、後悔はしてるんだけどどこか冷めて投げやりにもなってるような微妙な感じが、すごく良かった。だからこそ、モリマの行動も仕方がないというか憎めないというか…
どちらも可哀想でどちらも責められない、このもどかしさが良いんです。

 

シネマヴェーラの「美しい女優、美しい衣装特集」でかかりましたが、久我ちゃんのオードリー・ヘップバーン的スタイルに高峰三枝子のザ・マダムな装いももちろん素敵なんですが、モリマのボタンダウン×ブレザーも超眼福でした。

原田康子の原作。先日書いた「白い悪魔」の原作も原田康子で。

「白い悪魔」1958年 日本

2018.05.24

どちらも、さすが女の人が作り上げたキャラクターだなと思います。高峰三枝子にしても久我ちゃんにしても…白い悪魔の野添ひとみにしても。女の生々しさ、男からしたら理解できないような部分が出てる気がします。
で、どちらのモリマも「こりゃ好きになるわ!」っていう、もう理想的な男性像で。

この「挽歌」と「白い悪魔」と2本立てでかけちゃうんだから、ファンを殺しにかかってるとしか思えなかったですね。
いやぁ、良かった。良かったよ。