「アナザー・カントリー」1984年 イギリス





1984年
監督:マレク・カニエフスカ
出演:ルパート・エヴェレット、コリン・ファース、ケアリー・エルウィズ

1930年代。
イートン校で寮生活を送るガイは、ある日別の寮の生徒・ハーコートに一目惚れ。お友達のジャドや他の生徒に度々忠告されるが聞く耳を持たず、ハーコート一直線。
ところがある日、ハーコートへ宛てた手紙が来期寮長を狙うファウラーの手に渡ってしまい、ムチ打たれた挙句に来期代表の座も失ってしまう。
同性愛者であるという事だけで未来を閉ざされたガイは復讐心を燃やし、ジャドの共産思想に興味を持ち・・・

というお話なんですが、コレなんとロシアのスパイになった男の学生時代の実話なんです。
元々は舞台劇で、この映画ではガイの友人・ジャドを演じているコリン・ファースが主人公のガイ役でした。

出てる役者さんは美男揃いで常に画面が美しいという稀な作品です。
公開当時、その耽美な世界観に女子たちが熱狂したとか。気持ちはわかるぞ。

ハーコートよりジャドでしょ!

年老いたガイの回想はジャドの共産思想に興味を持つというところで終わる。
そこから何故スパイになっていったのかという経緯は描かれていません。上映時間は1時間半なので、もう30分くらい尺取ってその先を描いても良かったんじゃない?というより、観てみたかったなあと。

しかしまあ、何でもクソもないというか、おそらくヤケクソでしょう。
復讐心メラメラでそのままジャドに感化されて突っ走ってしまったんじゃないかと思う。

カテゴリ的にはまあホモ映画の部類にも入るんですけど、そういった恋愛的な描写はほとんどない。ガイとハーコートがボートの上で抱き合ってるくらいで。
それよりも特権階級争いのドロドロとか、ジャドとの友情の方が印象的だったな。

寮の代表になりたくて既に派手ベストまで用意しているガイ。特権階級に属する生徒は派手なベストの着用できるんですね。
しかし不真面目だったり反抗的だったりと素行に問題があるもんですからね。
あれじゃ同性愛のどうのこうのがなくてもうまい事いかなかったんじゃないのかね。自業自得なんですよ。

当時、同性愛といえば大犯罪です。
ガイの他にもマーチノという同性愛者の学生がいて、彼もバレちゃって自殺。
そもそもはここから大きく話が動いてくわけなんですが…

ガイ役のルパートは個人的にはあんまり好みじゃないんだけど(ごめんなさい)すっごい彫り深くて横顔なんてまるで彫刻のように美しかった。
ガイの大胆で繊細な雰囲気がよく似合ってます。

ハーコートは出番も少ないし存在感も薄い。ガイの相手役なのに…と思ったら、なんと舞台の方ではこの役は無いそうで。
ガイとお食事してる時の彼のALL上目遣いには若干引いたものの、ボートの上でガイを見上げた時の表情は大変可愛かった。
でも上着脱ぎながらガイのボートに乗り込んで来る時の顔はやっぱり怖かった。

演じているケアリー・エルウェズはその後、あのスーパーサイコムービー「SAW」に出演。
立派なおじさんになってました。

さてさて、私のお気に入りは筋金入りの共産主義者・ジャド。
演じるのはコリン・ファース。コリン・ファース、今やすっかりおなじみですね。
彼の映画デビュー作が、このアナザー・カントリーです。

私がガイだったらハーコートよりもジャドに惚れてるんだけどねぇ。
ガイはどうしてジャドに傾かなかったのかなあ(傾いたところでお断りされてただろうけど)

思ったんだけど、もしかしてガイって元々はジャドが好きだったのでは?
ガイが後ろから羽交い締めにした時のジャドの対応なんて、もう慣れっこみたいな感じだったし。爆

特権階級には一切興味がなく、夜中にこっそり「学校では教えてくれないし」とか言いながらマルクスを読み、勉強の際にはレーニンのちっこい像を必ず持ち歩き(ここ萌えポイント)、そして派手ベストな生徒には気味の良い嫌味を吐く。
冷淡なようでガイのために自分の信念を曲げてみせるところも、実は友達想いなのねーって感じで本当に素敵だ。

お気に入りのシーンは上記のみならず。
下級生に優しく接してあげるところや夜中にこっそり戻ってきたガイを驚かせるところ(お茶目さん!)、愚痴りにきたバークレーに説教するところなどなど。こうゆう人だから、他の生徒からも一目置かれてるようなところがあるんだよね。

とにかく言うことやることかっこいい。どのシーンもかっこいいのよ。
そしてまだ若いにも関わらず異常に声が低いのもポイント高い。おじさんになった今よりも若い頃の方が声が低くて渋いなんてどうなってるんだ?

ガイとジャド、全く正反対の性格。
同性愛者と共産主義者。種類は違えど同じ異端者。だからってわけでもないんだろうけど、なんだか妙に合っている。
突っ走る系のガイをやんわり見守るジャド。こんな友達いいよなぁ。

パブリックスクールの特権階級制度

ところでこの特権階級制度(制度?)、これがちょっと難しいんです。
別にそんなにわからなくても映画は十分楽しめるんですが…わかってた方が面白いと思うのでちょっとまとめましょうか。これこそ超ネタバレだけど。

まず、現在の代表がバークレーとデラヘイ。この二人が今度卒業するということで来期の代表を決めなければならない。
で、来期の代表兼寮長がメンギース、代表兼幹事がガイ、幹事がデブニッシュ…と、なる予定だったんです。

ところが、同性愛者である事がバレたマーチノが自殺した事により、デブニッシュが責任を取る形で中退することに。上にも書いたマーチノの件ですね。

ここからみんなの嫌われ者・ファウラーが寮長の座を狙い始め、それによりガイの代表の座は危うくなる。
何故なら、代表になるには寮長の指名がなければならない。ファウラーはガイが嫌いなので当然指名なんてしたくない。
ガイを代表候補から突き落とさなければ!コソコソ

その一方、メンギースは来期寮長としての地固めをしようと、ジャドに幹事を以来する。

…と、まあこんな感じの流れ。
ファウラーってのはガイに限らず誰に対しても揚げ足取りみたいなことしてるんですよ。だから嫌われてるんだけど。

結局、やめるやめる言ってたデブニッシュが『幹事じゃ無理だけど代表になれるなら中退をやめてもいい』とか言い出したせいで、ジャドの幹事話もガイの代表話も無くなってしまいます。
最後、ジャドがメンギースとデブニッシュに吐く嫌味が救いかな。

2回目からがおもしろい

登場人物が多い分、顔と名前も最初は一致しません。階級云々の話もこのとおりややこしく、1度観ただけではいまいちついていけないと思う。
なので1回観て終わりでは非常に勿体ない映画です。人物や話の流れをなんとなく把握した後でもう一度観ると、役者さんたちや画面の美しさを楽しむ余裕もできておもしろくなる。

そうとなれば美しいルパート・エヴェレットをじっくり拝むも良し、若い頃のコリン・ファースを楽しむも良し。
英国のパブリックスクールの世界観に浸ってみるも良しです。

そしてこの映画最大の魅力はなんといっても画面の美しさ。
光と影がうまく使われていて、美しくもありつつ寮内の重苦しくてじっとりとした雰囲気がこちらまで伝わってきます。