「アンナと王様」1999年 アメリカ





1999年
監督:アンディ・テナント
出演:ジョディ・フォスター、チョウ・ユンファ、トム・フェルトン 他

子どもたちの教師としてシャム王国(現タイ)に招かれたアンナ。
しかし文化や習慣、価値観の違いもあって、シャムの王様と度々衝突する。

本音をぶつけ合ううちにお互い惹かれていくが、そこへふたりを決定的に決裂させる事件が発生。
更に身内の裏切りもあり、シャム王国は大きなピンチを迎えることに…

予習:映画「王様と私」(1956年)との違い

「王様と私」という題で大変有名なコチラの作品。
既に映画化もされ、ミュージカル作品も人気ですね。ケンワタナベが王様やってたよね。

この「アンナと王様」という作品は、先に映画化された「王様と私」のリメイク作品…と思われがちですが、実はちょっと違う。いや、話自体は同じなんだけど。

「王様と私」は、アンナの手記を後にマーガレット・ランドンが小説化したものが元となっています。
対する「アンナと王様」は、アンナの手記そのものを元にして描かれている。
話自体は同じだか、元になってる部分が違うんです。

「王様と私」といったら「Shall We Dance?」が有名だけども、「アンナと王様」にはそれがない。
王様を演じたユンファも「関連資料や映像は一切見ないで演じて欲しい」的なことを言われていたそうで、なので「アンナと王様」は「王様と私」のリメイク作品として作られているわけじゃないんですよね。

Noe
というこで、ここでは「王様と私」との比較はなしでレビューしていきます。

良い意味で期待を裏切るユンファの王様

セットや衣装にお金がかかっていそうな作品はあまり観る気がしなくてね~…
いかにも低予算!って感じの地味系を元々好むってところもありますが、そんなわけでこちらも内容に関してはさほど期待してなかった。ユンファ出てるから観たかったってだけで。
しかしその期待を大きく裏切られました。

舞台は、日本でいうと江戸時代の頃。タイがまだ「シャム」という国だった頃。
国王の子供たちに西洋を学ばせるためにシャム王国に呼ばれたアンナ。息子のルイ(ハリポタのマルフォイ!)を連れてやってきたわけですが、国王は国務が忙しいとかでもう3週間も待たされている。
怒って帰国する直前、やっと国王と対面を果たしシャム王国での生活がスタートします。

たとえ国王相手でも容赦なく言いたいこと言っちゃうアンナ。イギリス人としての誇りが強すぎるくらい強い。
演じるのはジョディ・フォスター。いかにも気が強そうスッと1本筋の通った雰囲気がアンナのキャラクターにピッタリでした。ほぼすっぴんでこの美しさはどうゆうことなのかね…

そんなアンナとぶつかり合うのがシャムの国王。
正室23人!!側室42人!!子どもは58人!!
子どもはすぐに10人増えるとかなんとか言ってる。ぇえ…(絶句

「みな私の家族だ」とさらりと言える包容力と、国民の父としての威厳を持ち合わせていて…国王としての傲慢さも、持ち合わせている。
演じるのは私の愛するチョウ・ユンファ。あのどっしり丸い体格に元々本人が持ってるスター性もあってか、大勢のエキストラの中にいてもしっかり目立つ存在感!強そうでもあり優しそうでもあるあの表情、眼差しも王様にピッタリ。流石やね。

国として生き残っていくための改革に向けて進歩していきたい王様。
子どもたちに西洋を学ばせたいと考え、イギリス人教師のアンナを招集。とはいえやっぱり、文化や習慣や価値観の違いもあって度々アンナと衝突する。王様、ちょっと矛盾したところがあってそこについては本人もひっそり葛藤してたりする。

そもそもただの教師がここまで一国の王にズケズケ物を言って近づけるのか?って話ですがそれ言ったらこの話終わっちゃうのでね。
今まで自分の周りには存在しなかったインパクト大の女性だったからこそ王様も惹かれた、っていう話だからねたぶん。

王様の第一王子・チュラロンコーンも最初はアンナに猛反発。しかしルイとの喧嘩や奴隷絡みのちょっとした事件をきっかけに、彼もアンナに心を開いていく。ルイともすっかり仲良しに。
なんかね、正室も側室もみんないい人で仲良しで(中には嫌な女もいるが)アンナにも親切ですごく優しい。アンナも劇中で王様に疑問をぶつけてるけど、みんな内心どう思ってるんだ?
正室側室っていうと、日本の大河ドラマのイメージだとドロッドロじゃない。嫉妬心とか無いのか?
子どもたちも皆かわいくて良い子なんだよ。あの雰囲気は王様がまんべんなく愛してるが故なのかしらね。

アンナよりも後に、側室として王宮にやってきたタプティムという女性。
彼女は恋人と無理矢理引き裂かれ連れてこられた気の毒な人なんだけど、こんなことなら生きてく意味なんかないってことで出家し王宮からの脱出を試みるが失敗。恋人と共に囚われてしまう。そして処刑へ…

王様はふたりを許すつもりだったのに、先にアンナが出てしまったのが不味かった。
イギリス人の女の意見で国の王が判決を曲げたなんて国民に思われちゃうのは、王としての威厳が許さなかった。王は常に一番の存在でいなければいけないからね。

自分の面目のためにタプティムたちを捨てた王様にアンナは絶望&猛批判。王様だってそれが辛くてタプティムたちのために必死にお祈りしてたのにねぇ…王様の気持ちを思うと切ない。だけどアンナはもちろんそんなことは知らないから。

ぶつかり合いながらもお互いを認め合い惹かれ合ってきたふたりもついにここで決裂か。アンナはイギリスへ帰る決心をするが、ここでクーデター勃発!
中盤からじわじわと忍び寄ってきていたビルマ軍の影が一気に近づき、国も王様も最大のピンチを迎える。
さあ、アンナはどうする?

…っていうちょっとベタな展開を迎えつつ話はラストへ突入していきます。
裏切り者のむごたらしい最期は必見。

 

2時間半という長丁場になりますが各エピソードにムダがなくて間延びしない、かといって詰め込みすぎてる感もなく…最後ちょっと駆け足だけどね、それもまた緊迫感があってよかったです。作戦が速攻バレたのは笑ったけど。
アンナと王様の心の動きがとっても繊細に描かれていて、ふたりの距離感も絶妙でたまらんのですよ。2時間半、がっつり惹きつけられてました。

アンナと王様それぞれのセリフも、観ているこっちまでドキッとするものがあったりしてね。立場がどうとかではなく、人として、生きていく上で大切なものは何なのか…そんなことをこちらに問いかけてくる。

そしてなんといってもセットと衣装が素晴らしい!
これ、タイでの撮影許可が降りずマレーシアで撮られてるんですが、当然タイの王宮のような建物はない。ってことで全てセットなわけですがまあとにかく凄くて本物の王宮としか思えない。美術さん恐るべし。
エキストラの数も半端なく、シャムという国を見事に再現しています。

エンドロールで流れる曲はアンナの気持ちを歌ったものだけど、王様の気持ちでもあるよね。
王様曰く「例え私が望んだとしても」許されないふたりだったけど、うーん…

正室や側室を「家族」として愛してはいても一人の女性を「女性」として愛したことはなかった王様が、一度だけアンナをファーストネームで呼ぶシーンがある。
すっごく大事そうに愛おしそうに、「アンナ」って呼ぶんだよ。

本当に愛する女性とは結ばれることができなかった王様の切なさと悲しさが、この3文字に全部詰まってる。
このシーンはずっと私の心の中に残るかもしれないなあ。

タイでは撮影させてもらえなかった上に上映も禁止されてます。
これに限らず、先の「王様と私」もミュージカル版もタイでは上映禁止です。
どうも実際のアンナには虚言癖があったとかで、彼女の残した手記もどこまで本当なのかは怪しいらしいっていう…映画を観た後で知るとガラガラと夢が壊れるwエピソードが色々出てきますけど。

だけど、決してタイの国の人々が恥じるような王様の描き方はしてないと思うんだけどね。少なくとも私の目には、そんな風には映らなかったけどな。強くて優しくて、人間味溢れる素敵な王様だった。
ひとつの作品としてこれを観ることができないってのはちょっと惜しいんじゃないかなあ、なんて思ったりね。

素敵な映画でした。