「あゝ海軍」1969年 日本






1969年
監督:村山三男
出演:中村吉右衛門、峰岸隆之介、宇津井健、本郷功次郎、川口浩、森雅之 他

勉強はできるが家が貧乏故に海軍兵学校に入ったひとりの男の成長を描く。

※峰岸隆之介は後の峰岸徹

生き残った者が勝ち

戦闘シーンが少ないので、戦争物は苦手という人でもこれは見易いのでは?「あゝ海軍」っていうよりも「あゝ兵学校」にした方が話の内容に合ってるぐらいです。

主人公は鬼平犯科帳でおなじみ中村吉右衛門。
彼は勉強がとてもできるんだけど家が貧しくて、当時そういった学生は兵学校に入るもんだったようです。一高を受験しつつ、お母さん(村瀬幸子)には内緒で兵学校も受験してました。それで兵学校の方へ入るわけですが、後になって一高に受かっていたことがわかります。
吉右衛門は学問して政治家になりたかったのです。

吉右衛門は教官の宇津井健に「一高に行くので退学します」とかとんでもないことを言い出すものの当然却下され、怖くて暑苦しい熱血上級生・平泉征(後の平泉成)にぶん殴られ、しかしこの平泉征が、寝ている(ふりをしていた)吉右衛門の毛布をそっと優しく掛け直してくれたりするわけです。
感激したのか?それまではちょっとイヤイヤな感じでやっていた吉右衛門、次の日から人が変わったかのように張り切り始める。平泉征がちょっと引くくらい(笑)張り切る。そしてなんと、トップ卒業。

なんだか宇津井健にえらく可愛がられて、その流れで森雅之演じる海軍省の航空本部長の井口少尉(モデルは井上成美)にも可愛がられて、その流れで島田省吾演じる山本五十六にも一目置かれてエリート街道まっしぐら。
やたら眼が良いとか良い面構えしてるとか褒められてるんだけど、そこまで良い風には見えんが…イケメンかどうかとかそうゆうことじゃなくてね。
なんだか話がうますぎるなあという気もしますけど、こうゆう話なのでしょうがない。

やがて吉右衛門は部隊を率いてラバウル戦線へ。
部下に露口茂と成田三樹夫がいて、露口さんは元々は絵描きになりたかった人で、ラバウルでも絵を描いてました。お母さんの顔のスケッチを吉右衛門に見せながら「ほんとはもっとババアなんですが」
そのお母さん・浦辺粂子ばあやは後に息子の遺骨を抱いて登場。露口さんのスケッチとは似ても似つかず、出オチみたいなことになってます。
成田三樹夫はこれといったエピソードもなくすげー勿体ないんだけど、さすがに貫禄がある。

部隊を激励にラバウルまで来た山本五十六がやってきた。吉右衛門部隊は移動する五十六を護衛するも、なんと失敗。つまり、五十六はここで死んでしまうのです(海軍甲事件)。
責任を感じた吉右衛門は自決しようとするが結局部下に止められ、モリマに呼ばれ兵学校へ。そこで後輩たちの指導にあたりますが、再び前線へ出ることに。
赴任先は沖縄ということで。沖縄ですか…っていうね。観てるこっちは沖縄がどうなるかわかってますから。

そうして吉右衛門の行く末を暗示し、幕を閉じる。

 

友人の峰岸隆之介とはわりと頻繁に会ってるのに再会時のリアクションが毎度熱くて笑っちゃうんだけど、これって昭和8年から昭和20年までを描いているわけで。話の中ではかなり久しぶりの再会ということになってるんですよね。歴史的なところは実写映像を挟んでササッと流してて観てるこっちはそんな感覚がないから、おまえらさっきも会ってたじゃねえかよ、と。笑
特撮の方もよく出来てるなあと思うところもあれば、もろにおもちゃ丸出しなところもあり。違う映画?っていうくらい特撮の出来にムラがある。予算の都合ですかね。

映画の出来としては、どうですか…決して良い方ではないんだろうなあ、と思うのです。
これほんと無駄だなあというエピソードもいくつかあって。峰岸隆之介の彼女が死ぬくだりとか。「貧乏がいけない」の一言で終わらすくらいなら無くても良かったのに…
どうも、峰岸隆之介絡みのエピソードが入ってくると集中力が切れちゃうんだな。

しかし個人的に素晴らしいなって思うのは、戦争映画によくある「国のために死ぬ」よりも「生きてこそ」というメッセージが強調されていること。
「生き残った者が勝ち」これは日本の戦争映画では、あんまり聞かないセリフじゃないですか。だけどやっぱり、生き残った者が勝ちですよそのとおりだよ。死んでしまったらおしまいなんだもの。

吉右衛門の役は、ほんとは市川雷蔵がやる予定でした。市川雷蔵がやってたら…と、吉右衛門の顔を市川雷蔵に脳内変換し、ついつい妄想。病気だったんだから仕方がないのだけど。
顔がでかくて暑苦しい吉右衛門。どことなく大根っぽさはあるものの、あの暑苦しい顔が兵学校の雰囲気に合ってたしこれはこれで良かったのかも。卒業式で短刀を受け取るシーンの動きとか、さすがにきれいです。やっぱり歌舞伎役者さんです。

ところで大物たちはみんな実名で出てるのに、井上成美だけ「井口」と名前が変えられていてちょっと違和感がある。これは井上成美が公開当時ご存命だったので、配慮したということらしい。失礼があってはいけないしね…

その井上伊成美=井口役として、森雅之をわざわざ東宝から引っ張ってきたのは大正解だったと思う。
井上成美さんって、あの時代のあの日本の軍人さんとは思えないほど頭が良くて超クールな方なんですね。なのでもう、森雅之、まさに適任だったわけです。
あの渋さと貫禄は画面が締まります。さほどでもないような映画でも、モリマが出てくるとなんだか立派な風に見えてくるという効能があるんです。
穏やかな口調で話す言葉と視線の説得力たるや…ラストのセリフと軍歌演習を見つめる眼は、それはもう素晴らしかった。

モリマはこの時、58歳。年相応にシワがあるし若く見えるってわけでもないのに、ここまで色気と美貌をキープ…いや、むしろ増大してるのすごくないかい?おしゃれなコーヒーカップ似合いすぎじゃね?視線を動かすたびにエロくてほんと困った。